2006
安野モヨコの「さくらん」。
来春2月映画公開予定で、主題歌が椎名林檎だったり、主演が土屋アンナだったりと、かなり華やかな面子ぞろいでなにかと評判になっています。
江戸の遊郭・吉原が舞台の物語ということで、学生時代に遊女の研究についても少々かじった私としては(ほんの少しでありんすが・笑)、なかなか興味深いなーと思って、ちょいと買って読んでみました。
感想。なかなか面白かったです。
江戸の性風俗についても特に違和感なく、ちゃんと調べてるな、と思いました。
ストーリーも安野モヨコ節とでもいいましょうか、どこかあばずれてて、けれどもひたむきで、そしてパワフル。破天荒な主人公きよ葉のキャラクターが違和感なく物語りに溶け込み、ぐいぐいと物語に引き込まれました。
特徴的なほかの遊女についても、短めのエピソードの中で個性がしっかりあらわれていましたし、また基本的にエグイ内容なのですが、それを笑いと切なさというもので上手にくるみ、読みやすく消化させているな、と感じました。
そんな中から特に印象的だったシーンとエピソードをいくつか。(以下ネタばれあり)
まず、浅黄裏の話。いわゆる絶倫男の話なのですが、時のおいらん粧ひと、とめき(禿期のきよ葉)のやり取りがコミカルでよいです。毒づきあいながら、それでも二人の間にほんのりとした絆というか、そういったものが、さりげなく感じられるのも上手いです。
しかも、粧ひが浅黄裏に夜通し抱かれ疲れ果て、たまらず「ひいー たすけてー」と叫ぶシーンは普通は悲壮感が漂うはずなのですが、ブラックジョークの如く笑いにくるんでいるので、思わずプと、ふきだしてしまいました。多分男性作家が男性視点で描くと、エグいシーンになったのだろうなあ、と思いますが、女性作家ならではの性のブラックユーモアに昇華できているのはお見事です。
次に、ちょっとほろりときたのがお染ちゃんとの話です。お互いに励ましあい、痛みを分かちあってきた同じく引込(将来売れっ子を約束された遊女のたまご)のお染ちゃんとおりん(引込期のきよ葉)の間には、「お互い二人の時だけ泣いてもいい」という約束がありました。けれど突然のお染ちゃんの死に、おりんは一人涙します。そこへ見世番の清次がやってきて、「こんなところで無駄に涙を流すんもんじゃねえ 泣くなら客の前で泣きな」と言います。そしておりんは涙をぐっとこらえ、「にやり」と不敵な笑みを作るのでした。
この「にやり」に子供ながらの生きていくための意地がみられ、そしてこの不敵な笑みが、のちにきよ葉のウリとなるわけです。切なさと、意地と、そして粋を感じさせるシーンでした。
そして一番エロティックだなと思ったシーン。それは一人で惣次郎が、まだ新造のきよ葉に会いにくるシーンです。
惣次郎が名前をきよ葉に告げると、きよ葉がもらすような声で「そう・・・じ・・・・ろう さ・・・ま」と言葉をつむぐこの場面。ここの時点でかなり色っぽい雰囲気が出ているのですが、そのあと惣次郎がきよ葉のかんざしを一本髪から抜き取り、薄手の着物の上から(たぶん襦袢?)乳首を甘噛みします。たまらずきよ葉が「あっ・・・」と声をあげるのですが、ここは相当色っぽい見せ場です。そのあとのきよ葉の切なさや焦れた思いが切々と伝わってくるのも上手いです。
とりあえず今のとこは一巻しか出ていないのですが(単行本には1巻とは書かれていない)、雑誌のほうで何話か話が進んでいるそうです。ただ途中でストップされているそうですが・・・(^^;。
映画は見に行こうかと思っています。映画のHP見たら、映像綺麗だったし、大好きな菅野ちゃんが粧ひ役で出てるしね♪
そんなわけで評価は五つ星満点中
☆☆☆☆・☆(星4.5つ)
でした。
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